第306話あなたは良くなっています

セレーナは無駄な時間を使わなかった。

まずはウォークインクローゼットに入り、エイドリアンの今日の服を整える。

次に小物を用意しようと、腕時計の入った一段目の引き出しを開けた瞬間、視界の端にそれが飛び込んできた。いちばん上の列のいちばん手前――彼女が自らデザインし、ロック・グループで働き始めた頃に贈った腕時計だ。

すぐ手が届く場所にある。

きっと、よく身につけているのだろう。

それを見ただけで、意図せず鼓動が速くなった。

そのとき、外から足音が聞こえた。

セレーナは慌てて引き出しを閉め、クローゼットを出ると、そこにエイドリアンが立っていた。

もう起きている。

腕時計に目を落とす...

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